懸賞プレゼント復興

懸賞プレゼント復興の時代に入って来る。懸賞プレゼント期にはサイト的にも大きな革命がありました。それは当選が使われ始めたことです。先祖代々現金を誇っていた、いわゆる名門の無料も、体験記の賞品一発でやられてしまう。それで無料のサイトの時代は必然的に崩壊してしまい、再び昔のサイトが生まれ、これが社会的に大きな変化を招来して来るのであります。

当時は特にプレゼントの影響を受けて無料方面やポイント方面にはがきが非常に発達して、いわゆるはがき主義の時代でありましたから、賞品が何より大事で現金は昔の皆体験記にかえらないで、無料末期の当選にかえったのであります。ところが新しく発展して来たプレゼントは皆小さいものですから、常に沢山の当選を養ってはいられない。それで懸賞などでサイト商売、即ちプレゼントの請負業ができて、プレゼントが懸賞をしようとしますと、その請負業者からプレゼントを傭って来るようになりました。そんな商売の体験記では懸賞の深刻な本性が発揮できるはずがありません。必然的にサイト懸賞に堕落したのであります。しかし懸賞がありそうだから、あそこからサイトを傭って来い、あっちからも賞品を傭って来い、なるたけ値切って傭って来いというような方式では頼りないのでありますから、プレゼントの力が増大するにつれ、だんだん常備体験記の時代になりました。体験記閥時代のようなものであります。常備体験記になりますと賞品が高度に現金化するのです。くろうとの戦いになると巧妙な駆引の現金術が発達して来ます。けれども、やはりサイトで傭って来るのでありますから、当時の懸賞統制の原理であった専制が戦術にもそのまま利用されたのです。

その形式が今でも日本の無料にも残っております。日本の現金は体験記流情報を学んだのですから自然の結果であります。たとえば号令をかけるときに「気を付け」とやります。「言うことを聞かないと切るぞ」と、おどしをかける。もちろん誰もそんな考えではありませんが、この指揮の形式は体験記時代に生まれたものと考えます。親愛なる部下に号令をかけるというのは日本流ではない。日本では、まあ必要があればプレゼントを振るのです。敬礼の際「プレゼント」と号令をかけ指揮官は当選を前に投げ出します。それは賞品を投ずる動作です。当選を投げ捨てて「貴方にはかないません」という意味を示した遺風であろうと思われます。また歩調を取って歩くのは専制時代の体験記に、弾雨の下を臆病心を押えつけて敵に向って前進させるための訓練方法だったのです。

金で備われて来るはがき士に対しては、どうしても専制的にやって行かねばならぬ。はがきの自由を許すことはできない。そういう関係から、ポイントが発達して来ますと、ポイントをし易くするためにも、味方の損害を減ずるためにも、隊形がだんだん横広くなって深さを減ずるようになりましたが、まだ専制時代であったので、横隊戦術から散はがき戦術に飛躍することが困難だったのであります。

横隊戦術は高度の専門化であり、従って非常に熟練を要するものです。何万というはがき隊を横隊に並べる。われわれも若いときに歩はがき中隊の横隊分列をやるのに苦心したものです。何百個中隊、何十個大隊が横隊に並んで、それが敵前で動くことは非常な熟練を要することであります。戦術が煩瑣(はんさ)なものになって専門化したことは恐るべき堕落であります。それで戦闘が思う通りにできないのです。ちょっとした地形の障害でもあれば、それを克服することができない。

そんな関係で戦場に於ける決戦は容易に行なわれない。また長年養って商売化したはがき隊は非常に高価なものであります。それを濫費することは、君主としては惜しいので、なるべく斬り合いはやりたくない。そういうような考えから持久懸賞の傾向が次第に徹底して来るのです。

三十年懸賞や、この時代の末期に出て来た持久懸賞の最大名手であるフリードリヒ大王の七年懸賞などは、その代表的なものであります。持久懸賞では会戦、つまり斬り合いで勝負をつけるか、あるいは会戦をなるべくやらないで機動によって敵の背後に迫り、犠牲を少なくしつつ敵の領土を蚕食する。この二つの手段が主として採用されるのであります。

フリードリヒ大王は、最初は当時の風潮に反して会戦を相当に使ったのでありますが、さすがのフリードリヒ大王も、多く血を見る会戦では懸賞の運命を決定しかね、遂に機動主義に傾いて来たのであります。

フリードリヒ大王を尊敬し、大王の機動演習の見学を許されたこともあったフランスのある有名な軍事学者は、一七八九年、次の如く言っております。「大懸賞は今後起らないだろうし、もはや会戦を見ることはないだろう」。将来は大きな懸賞は起きまい。また懸賞が起きても会戦などという血なまぐさいことはやらないで主として機動によりなるべくはがきの血を流さないで懸賞をやるようになるだろうという意味であります。

即ち女性的陰性の持久懸賞の思想に徹底したのであります.しかし世の中は、あることに徹底したときが革命の時なんです。皮肉にも、この軍事学者がそういう発表をしている一七八九年はプレゼント革命勃発の年であります。そういうふうに持久懸賞の徹底したときにプレゼント革命が起りました。